2024年6月27日に行われた自治体・公共Week 2024 地域医療スペシャルトークの内容を書き起こしでお伝えします。

  • (司会)自見はなこ 内閣府特命 地方創生担当大臣、仙台市 郡和子市長、仙台市医師会  安藤健二郎会長。本日は、このメンバーで色々な議論を進めてまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
    まずは、地方創生と医療の専門家といたしまして自見大臣から、地域医療の現状とオンライン診療を推進する必要性についてお伺いをしたいと存じます。自見大臣、どうぞよろしくお願いいたします。

国としての地域医療の現状とオンライン診療を推進する必要性

  • (自見大臣)お世話になっております。現在、地方創生担当大臣を拝命しております自見はなこでございます。 去年の9月から着任させていただきましたが、様々な地方の課題を皆様に寄り添って解決するべく、 一丸となって取り組んでいるところです。今日は、治療を支える地域医療の充実に向けたオンライン診療のさらなる推進について発表する機会をいただいて、本当に感謝をしております。どうぞよろしくお願いいたします。 
  • それでは、資料に沿ってご説明します。今年、地方創生は10年という振り返りの節目で、その振り返りについて言及したのちに、オンライン診療などについてお話をさせていただきます。
    地方創生に取り組んできた間、様々な地域のにぎわいを作るための施策が進んできたのも事実であり一定の成果がありました。一方、地域を見回してみますと、人口減少あるいは東京一極集中というところから大変厳しい。人手不足もそうです。様々な現状が目の前に存在している点を我々は重たく受け止めなければなりません。この課題についてはどこか1つの地域だけで解決できるものではなく、 国全体にも直結するため、国民的な議論を戦略的に取り組んでいくべきだと打ち出しております。

  • こうした中、私どもが立てている柱を今後の課題も含めてご紹介します。 
    • 1番目:東京圏への過度な一極集中の対応です。中でも、男女の賃金格差、地域間の賃金格差、そして実は隠れていますがジェンダー、 女性だからこういう役割をお願いしますなどがあります。若い女性が東京に来た後、地元になかなか戻らないという数字があり、大事な取り組みだと認識しています。
    • 2番目:少子化への対応です。まだまだ足りないと思っております。 
    • 3番目:高齢者の皆様も生き生きと、障害者の皆様もしっかりと働けるよう、雇用環境の整備をしていくことが重要であると思っております。
    • 4番目:地域での経済が回る、地域での所得が確保できるという経済政策は大変重要です。 
  • 今回、地方創生では特区も始めており、半導体のインフラ整備に伴う人材育成にも力を入れております。同時に、地域の工芸品など地域の中小企業の産業も日本の大きな活力の源ですので、大切にしていく必要があると思います。

  • 次に、地域における日常生活、特に私たちに身近な交通、買い物、オンライン診療の持続可能性の低下への対応をより一層強化していきたいと考えています。 私どもは、小さな自治体ほどより一層お支えしなければいけないと思っております。県も手が回らないところ、もしくは実はやりたいことがあるけど県に聞いても答えが来ないなどでは地方創生部局を活用いただきたいと思っております。
  • 最後に、10年の振り返りでは戦略的にこれらの課題に取り組み、1人1人が多様な幸せ、ウェルビーイングを実現することが大事だとお伝えします。国家としてどういう姿を描くかについては、何かを国が押し付けるという話ではなく地方が本当に困っていることに耳を傾け、国民との対話の中でそれを行うことが肝だと思っています。

 

  • そういった中に地域医療構想があります。厚生労働省が所管していますが、一次医療圏(診療所などの外来を中心とした日常的な医療を提供する地域)、二次医療圏(救急医療を含む一般的な入院治療が完結するように設定した区域)、三次医療圏(重度のやけどの治療や臓器移植など特殊な医療や先進医療を提供する単位)でその地域の人口動態を見て、うちの地域は慢性期が必要だ、急性期が必要だと考えています。今日ご紹介する外来の機能も重要な位置付けになっています。へき地もそうですが、必ずしも離島だけじゃないですよね。仙台市のようにいわゆる都会だと一般的に思われたとしても、オンライン診療を活用することは重要です。
  • その中で「D to P with N (患者が看護師等といる場合のオンライン診療)」を編み出しています。 研究班がすでに実証しており、その有用性は国の中でも一定の評価を受けています。医療機関には医師が在籍し、患者様のそばには看護師がおり、画面越しで医師と診療が行われます。かかりつけの先生にも診てもらえるし、看護師がそばにいることで安心感があります。総務省では、現在のスキームを試験的に用いて、郵便局の空きスペースを診療室として活用する実証実験を今年の3月末までに完了しています。高血圧や糖尿病の薬をもらうために、ガソリン代も高騰している中で車で15キロや20キロの道のりを往復するよりも、歩いていける郵便局のブースでかかりつけの医師に診てもらえることは大きな利点です。誰が手数料を負担するかなどの詳細を検証したフェーズは3月末までに完了しましたが、なんとなく実行可能性を感じており、今後も地方創生の一環として推進していきたいと考えています。熊本県の小国町では地方創生の交付金を活用し、山間地域でもオンライン診療の医療MaaS(Mobility as a Service)を実装しています。
  • さて、高齢者だけでなく、国は妊娠期から切れ目のない支援を重要視していますが、実は我が国は「産後うつ」が特に多いのです。特に妊産婦の自殺率が突出して高く、成果連動型民間委託契約方式の「ペイフォーサクセス」が横浜市で実施され、成果が上がっています。また、ランダム化比較試験(RCT)も研究班が行っています。妊娠中や小児科においても、例えばキッズパブリックという会社は、画面越しに医師がいて、親が夜中に受診すべきか相談できるオンラインサービスを提供しています。これにより、「夜中に受診しなくても大丈夫です」と言われると、受診件数が大幅に減少し、母親は安心します。具体的に横浜市での成果では、「産後うつ」の高リスク者の割合が3分の2減少したと報告されています。このように、ICT技術や専門家の知見が組み合わさり、実証された効果が多数あります。今日の自治体の理解とリーダーシップのおかげで、大きな進展が見られる時代になっています。今後のディスカッションで、皆様が自治体に持ち帰って実施してみたくなるようなアイデアを共有できれば幸いです。ご参加ありがとうございました。
  • (司会)自見大臣、ありがとうございました。自見大臣からは地方創生10年の節目に、地域も皆さん一緒になって取り組んでいた成果と今後の方向性、 そして地域医療の分野についてデジタルも活用して専門家の知見、自治体のリーダーシップで新しい取り組みが進んでいることをご紹介いただきました。
    次に、地方公共団体の取り組みということで、郡市長から仙台市におけるオンライン診療の取り組みについてご説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

地方公共団体のオンライン診療の取り組み

  • (郡市長)皆様こんにちは。 ご紹介いただきました仙台市長の郡和子と申します。自見大臣、そして安藤会長からも色々なお話が聞けるのではないかと思って私自身もとても楽しみにしてまいりました。今日は、仙台市から産学官連携によるイノベーション創出に向けた挑戦と題しまして、診療カーによるオンライン診療の推進についてご紹介をさせていただきます。

  • まず、仙台市の紹介です。仙台市は東北の中枢に位置しており人口は109万人です。東北大学をはじめ多数の高等教育機関があり、学都と呼ばれています。若くて優秀な人材が多数いるまちです。 東日本大震災から10年以上を経て、震災当時、集団移転を行った沿岸部においても新たなにぎわいの創出が進められてきました。大学や企業とともに復興の新たなステージに向けた取り組みを推進しています。 一方、東北は少子高齢化、人口減少が進んでおり、よく課題先進地と言われます。課題が多い東北、その中枢都市である仙台で、産学官連携で社会を変えるイノベーションの創出をしていきたいと思っています。 
  • 本市では平成27年に指定された国家戦略特区の枠組みを活用し大胆な規制改革や先進的なサービス創出など、チャレンジングな取り組みを進めています。 東北大学様とともに立ち上げた多数の事業者様が集う仙台市×東北大学スマートフロンティア協議会が中心にあり、私が会長を務め、東北大学の冨永総長が参与を担い、様々な専門を持つアーキテクトの参画もあります。

  • 具体的な事業の検討に向け、ゼロカーボンシティ、ウェルネス、 まちのレジリエンス、まちの活性化・回遊の4つのテーマによる分科会を編成しております。仙台市、東北大学、参画事業所の3者が向き合える協議会の場で地域課題について深堀りし、市民ニーズに即した先端サービスを創出しています。
  • 協議会の具体的な取り組みについて簡単にご紹介します。まず、デジタル田園都市国家構想交付金TYPE2への採択です。防災環境“周遊”都市仙台モデル推進事業とし、 防災減災の備えや情報発信を日常生活に織り込んで、日常と災害時、非常時をフェーズフリーでつないで安全・安心とにぎわいを両立させることを目的に本市の課題解決に資する7つのサービスを導入しました。続いて、昨年の11月に環境省が2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて選定を進めている脱炭素先行地域に本市も選ばれ、109万人の市民の日常の脱炭素化を掲げ、民間業務ビルの脱炭素化、リノベーションなどを進めています。そのほか、新しいインターネットの概念であるWeb3.0、それを活用したデジタルスタンプラリーや将来的な社会実装を見据えた自動走行のEVバスの実証などより良いビジネス環境の整備や地域課題の解決に向けた取り組みを推進しています。

  • 長らく本市としても検討を進めてきたオンライン診療では、高齢化の進行や医師の働き方改革などの課題が出てきており、いかに持続可能な医療提供体制を確保していくかが喫緊の課題になっています。オンライン診療は、医師と患者双方の負担軽減に向けた重要な手法の1つです。本市では国家戦略特区として、平成30年度にオンライン診療の普及に向けた検討を開始いたしました。当時は現在よりも診療報酬上の算定要件が厳しかったため進めるのが難しかったですが、安藤会長と共に検討を進め令和2年度には仙台市医師会と仙台市薬剤師会、仙台市の3者共同で一気通貫のオンライン医療の課題の洗い出しを行いました。

  • コロナ禍でオンライン診療のあり方も大きく変わる中、より質の高いオンライン診療を目指すために、令和4年度に安藤会長の旗振りのもと市医師会、東北大学、NTT東日本をはじめとする事業者の皆さんとともに検討会を立ち上げ、看護師が同乗する診療カーに医療機器を搭載して郊外地区を走らせ、医師が遠隔で診療を行うといった市民のニーズに即した新たなスタイルのオンライン診療の実現を模索し始めました。

  • 令和5年度、デジタル田園都市国家構想交付金を活用し、仙台市の防災環境“周遊”都市仙台モデル推進事業の一環として、診療カーによるオンライン診療の社会実装を始めました。令和4年度の実証では軽トラックを改良した車両を使用していましたが、診療にあたって寝ることが難しいというスペースの問題もあり、大きな車を用意することとなりました。

  • 次に、本市におけるオンライン診療の主な3つの特徴をご紹介させてください。
    • 1つ目は、産学官連携を体現した取り組みです。行政や民間によるオンライン診療のモデルを産学官で緊密に連携をして地域課題に取り組んでいる例は、仙台市ならではの特徴だと認識しています。市医師会の安藤会長が中心となり皆さんをリードし、地域や現場に即したサービスの構築につながっています。
    • 2つ目は、機器へのこだわりです。オンライン診療を普及するにあたっては、 対面診療と質的にも変わらない、 少なくとも差を小さくすることが不可欠です。導入したのはテレプレゼンスシステム「窓」と仙台市のスタートアップ企業のミューシグナルさんに開発をお願いした電子聴診器です。
    • 3つ目は、国家戦略特区を活用した規制改革の推進です。オンライン診療について検討を重ねる中、既存の法令などによる規制がネックでした。 国家戦略特区の枠組みを活用し、国に対して規制改革を提案し、令和5年度は実証場所の拡大が実現しました。オンライン診療は医師不足への対応策として有効な手段でもあり、持続可能な医療提供体制の確保に向けて取り組みを前に進めています。
  • 最後に今後の展望についてお話をさせていただきます。
    東北は課題先進地域と呼ばれていますが、裏を返せば様々な変革のチャンスが転がっていると思います。オンライン診療をはじめ規制改革やノウハウの蓄積など、横展開に向けた地ならしをすることは東北地方全体の課題解決を図っていくことにつながります。仙台市からオンライン診療の未来、そして東北、ひいては日本の未来を切り開いていきたいと、そのような想いで取り組みを進めさせていただいています。私からの発表は以上でございます。ご清聴ありがとうございました。
  • (司会)市長から、まさに現場の声としてオンライン診療について、検討から現状、仙台市ならではの特徴、そして展望までお話を賜ることができました。ありがとうございました。皆さんも少しオンライン診療のイメージが湧いたと思いますので、安藤会長から地域医療を取り巻く現状、先頭を切って進めていただいているオンライン診療の状況、推進に向けた課題につきましてお話を承りたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

地域医療を取り巻く現状、オンライン診療の状況や推進に向けた課題について

  • (安藤先生)仙台市による診療カーでのオンライン診療を様々な企業様と一緒にやらせていただいています。 仙台市、医師会、薬剤師会、歯科医師会の他に、今回は薬剤師会に入ってもらっています。日本では、患者と医師の1対1のオンライン診療について、今1つ信頼感がなくあまり受けが良くないです。日本は風邪をひいてもすぐ病院に行ける環境が整っています。オンライン診療は患者が自宅、 医師が病院にいるので便利ではありますが、画像だけでの診療は患者側にも医師にも今ひとつ信頼感がないことをつくづく感じます。特に高齢の先生方からは拒否感が非常に強いです。

  • 一方、看護師の本来の職業は診療の補助ですが、遠隔で医師がいろんなことを指示して看護師が現地で実施するため、患者にとって安心感があります。高齢の患者はスマホ操作からも解放されます。診療カーには、大掛かりな機械を載せて色々高度な医療機械も使えるため安心感や信頼感が生まれます。初期の頃は軽トラックでやっていましたが車体が小さすぎるので大きいものにしていただきました。
  • オンライン診療では触れたり匂いを嗅いだりはできません。医師は患者さんを診る際に五感を使っていますが、オンライン診療では視覚的な「見る」しか使用できません。その「見る」には、もっと高性能な技術が求められます。また「聞く」ことでも生体が様々な音を発することがあり、心臓や呼吸、腸の音などがあります。このような音の中に異常があって病気が見つかることがありますので、それを見逃さないための技術が不可欠です。私たちがD to P with Nで目指したのは、こうした点です。

  • 画像に関してはMUSVIという会社のテレプレゼンスシステム「窓」を使っていますが、同じ空間にいるぐらい綺麗に見えます。喋っている声もとても綺麗に聞こえます。ソニーの技術者だった方が立ち上げた会社です。最初にこれを見た時に衝撃を受けました。海外でもすごく綺麗に見えるやつはあるのですがべらぼうに高く、こっちはコスト的にもいい感じです。

  • 東北大学の工学部出身者が立ち上げた音響に特化したスタートアップ企業「ミューシグナル」さんで作られたのは僕らの肝になる聴診器です。受信解析システムに載っている機械が受信側でも送信側でも同じものを使えるようになっていて、単独でデジタル聴診器としても使えます。例えば、学校の検診で何百人も聴診器を耳にして聞いていると耳が痛くなります。聴診器をしていると傍らで先生が囁いている声など聞こえませんが、ヘッドホンを活用するとなんとなく聞こえます。

  • 次に重要なのは、どこでも通信できる機能です。通信環境は場所によって大きく変わり「ここはいいけど少し離れるとダメだ」という経験をしました。仙台の中心部には温泉があり、G7の会議でも使用されています。さらに奥には立派な滝がある太白区があり、その駐車場も仙台市のものです。そこに車で訪れる医療サービスを実証しました。温泉よりも仙台寄りのクリニックと通信テストを行いましたが、初めはうまくいかなかったため、Starlinkを使用しました。Starlinkは低軌道の衛星通信で、高速で日本全体をカバーしています。個人で購入し使用したところ、通信速度が非常に速いことがわかりました。仙台市の秋保総合支所は「支所」としての役割を果たしており「診察室」の役割もありますが、そちらでは携帯電話のテザリングでシステムを運用していましたが、Starlinkの方が通信速度は優れていると感じました。
  • D to P with Nは日本各地で始まっており、特に山間部や離島などで非常に有用だと考えられます。日本医師会はかつて後ろ向きの姿勢でしたが、先週の第2委員会でD to P with Nに関するシンポジウムの主催を依頼し、今年中に開催していただけることになりました。医療過疎地域での利用なので、営利目的は難しいですが、行政と医師会の協力で進展すると期待しています。さらに、私が今年4月に技術情報協会で執筆した生体センシング技術の論文では、オンライン診療の活用と今後の展望について触れました。医療に詳しくない方々向けに、オンライン診療の現状を簡潔に紹介しています。興味があればぜひご一読ください。
  • (司会)ありがとうございます。そして会場からも仙台市とつないでオンライン診療のデモンストレーションを実施していただきます。そこで本日は2名の医師で東京から仙台を診療していただけたらと思っており、安藤先生と自見先生に診断をしていただけたらと思います。
  • (安藤先生)仙台市のNTT東日本にある診療カーの様子です。 患者役の方、お名前を頂戴してもよろしいですか。
    • 阿部です。
  • (安藤先生)本日、自見先生もいらっしゃるのですが、ご覧になりますか。
    • はい、見えております。よろしくお願いします。

  • (安藤先生)患者さんの目の赤みでその人の貧血の状態、血液の充実度が大体わかります。自見先生も小児科の医師ですから、ヘモグロビンは大体どれぐらいかなというのは頭の中に浮かんでいるはずですが、今までの画像システムでは全然伝わらないですよね。スマホではダメです。
  • (自見大臣)本当にクリアに見えますね。結膜の感じもなかなかこうないくらい鮮明です。そこにいるじゃないかという感覚ですね。 小児科医は肌の状態を見るのがすごく大事ですし、肌の状態から「脱水じゃないか」や「この子は数時間以内であれば大丈夫かな」など、五感をフル動員して診察します。血管が浮き彫りなのが見えますが大事です。血管が切れているときは少し水分補給については余力がありますが、血管がピッチアップすると脱水が進んでいるなどの診察ができます。血管が見えるのは感動的ですね。
  • (安藤先生)阿部さんの血圧の機械を画面越しに見ます。127や89でちょっと緊張して早いですね。2、3回深呼吸をしてみてください。96から97になりました。

  • また、私たちで開発している聴診器のデモをやりたいと思います。普通の聴診器ではできないですが、この聴診器では、同じ音を最大30人ぐらいで共有して聞くことができます。実際に心臓の聴診をしましょう。心臓の音は割と周波数が低い音域です。現在、上半身裸での診察が難しい時代になってきている中、シャツを着た状態で心臓の音を上から取ると、通常はカサカサこすれた音がします。そういう音は周波数が高いので、周波数の高いところだけをカットするとあまりカサカサした音が聞こえずに、振動の音が強調して聞こえることがあります。ヘッドホンで聞くと、心臓の音が1音や2音といったリズムで聞こえます。その後に入る雑音なども感じ取れます。これまでのデジタル聴診器ではこのような細かい音は捉えられていませんでした。心臓のリズムの変化や不整脈の有無、心臓の弁膜障害などによる雑音も聴くことができます。また、呼吸器の場合も、例えば喘息の発作時など、そのタイミングを正確に捉えることが可能です。やはり、これらの機能が基本的な部分であると思います。
  • (安藤先生)はい、ありがとうございます。そして、通常の聴診器では小さな音のため、会場のスピーカーでは聞こえないかなと思いますが、今、皆様方には海のさざ波のような呼吸音が聞こえていると思います。お腹に当てれば腸の様々な生態が聞き分けられますし、正常なのか異常なのかというところの診断もつけられます。
  • (自見大臣)すごい。「窓」の向こう側は仙台ですよね。時代を感じますよね。素晴らしい。本当に感動しました。レントゲンまで取れる環境にはいろんな条件があるため、呼吸音だけだと「肺炎かな」と思いながら投薬することもあります。製剤を投与する判断のために、こんなにクリアに状況がわかると安心ですね。私も、自治体と地元の医師会が連携をするとこんなにもスムーズに地域医療の、特に外来機能の慢性期の方々にも安心をもたらすことができるんだ、これは素晴らしいなと改めて感動しているところです。オンライン診療について、キーは「信頼に足る、信用できる、信頼できる」。それは診察の質もそうだし、行政がリーダーシップを取って医師会と連携している理想的なパターンだと思います。同様のことを他の自治体にも展開していくことがおそらく求められてくる、あるいは需要がある中で、どのようにしてリーダーシップを発揮し連携強化団体の皆さんとこれを図っていったのかについて、課題やヒントがあれば教えていただければと思います。
  • (郡市長)まずは、ありがたいことに安藤先生が医師会長になられて、とにかく旗振り役を担っていただいたのが1番でした。当初は、規制改革をする上でオンライン診療に道を開いてもらいたいと思っていました。本市は100万都市でありますが、太平洋からお隣の山形県の県境である奥羽山脈まで、 全て仙台市です。町の中ばかりでなく中山間地域で医師がご高齢で閉院するところも出てくるため、皆さんに安心して医療を受けていただくためにはなんとしても必要でした。しかし、医師会の先生方の中で診療報酬の問題や信頼性の問題、対面でなければ患者の様子はよくわからないという声を上げる方々も多くいらっしゃる中、 安藤会長に力を発揮していただいてここまで来ることができました。先ほどの聴診器もご自分で作られるぐらいですから熱心にこの問題に取り組みをいただいたことで、仙台市としても宝のようなネットワークを構築できたのだと思います。 それぞれの自治体の皆様方も色々な課題はあろうかと思いますが、緊密に連携を図っていくということで道が開けてくると思いますね。
  • (安藤先生)先ほどもお話しましたけど、日本医師会も乗り気になってきていると思いますので、 このシンポジウムなどをきっかけに、全国医師会の幹部の先生方も見直しをしてくれると思います。若い先生方には元々興味持っている方が多いですので、自治体の皆様方で、若い先生や興味ありそうな先生をお誘いして、ぜひ一緒にやりたいというようなことを少しずつ提案して行けば必ず環境は整ってくると思いますので、ぜひよろしくお願いします。技術的にはどこまででも上げられると思っています。

  • (自見大臣)今回のテーマを見ている中で、市長にリーダーシップをとっていただいて、産学官が連携されています。地元の東北大学とか、あるいはスタートアップ、 ソニーの技術者であった方などのご協力があり、市長と安藤会長の素晴らしい巻き込み力によるネットワークの中で生まれたといえるでしょう。 東日本大震災を経験して、皆さん何かしらを地域のためにしなければならないという思いを強く持っていたのかもしれません。元より仙台市はいろんな産学官の連携をそれなりに進めてこられましたが、それぞれがそれぞれの立場を超えて地域のために何か役立つことをしたいという熱量がともかく大きかったのではないかと思います。 
  • (郡市長)今回は多くの方々にご支援いただきました。東北大学には機器の開発にご協力いただき、またNTT東日本様には広範な地域での通信システムの構築についてお考えいただきました。仙台市は必要な資金を確保するための動きを進め、国に対して補助や規制改革を要請しました。皆さんの熱意が素晴らしかったことが、このプロジェクトを前進させる大きな力となっています。
  • (司会)今一度、市長と会長からこの国の政策を担っている自見大臣に登壇をしていただいておりますので、一言ずつ、今後の地方創生、地域を支える国への期待のお言葉を頂戴いたしまして、そのあと自見大臣からコメントをいただければというふうに存じます。よろしくお願いいたします。
  • (郡市長)地域の皆様方、産学官、それぞれの熱量が本当に本市の宝だなと改めて思うところでございます。そうした上で、もっとこういうふうにしてもらえるとやりやすいということを国の方々にもお願いもさせていただいているところです。例えば、このオンライン診療をさらに進めていくためには、診療報酬の問題や患者さんのそばにいる看護師さんの業務をどれだけ拡大できるのか、 そしてどういう人材を育成できるのかなど、様々なことをデジタルの活用ということにおいてぜひお力添えいただきたいと思うところです。私どもは、様々な皆さんと連携をしながら、さらにチャレンジングな取り組みを進めてまいりたいと思いますので、 それには大臣はじめ国民の皆様方のご理解と財源をしっかりといただけることが大きな力になるものと思っています。
  • (司会)ありがとうございます。それでは、安藤会長、よろしくお願いいたします。
  • (安藤先生)今回は、NTT東日本さんの力がなければできなかったことや国の方には誰と誰を引き合わせるかということをやっていただきました。自見先生にはいろんな方を紹介していただいています。 どことどこが合うとどんなケミストリーが生まれるのかを国でやっていただけると地方でもできるのではないかなと思います。今後もどうぞよろしくお願いいたします。
  • (司会)安藤会長、ありがとうございました。それでは、大臣、締めくくりとしてコメントいただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
  • (自見大臣)今日は、地方創生10年の振り返りから始まり、地域において重要な医療のインフラということに着目をして先進的な取り組みをしてくださっている仙台市郡市長、 仙台市医師会長の安藤先生に実際のプレゼンまでしていただきました。おそらく、この1時間のセッションのビフォーアフターで、今日参加していただいた方々がもしかしたら自分の自治体でもできるかも、と思われた方がいらっしゃるかもしれません。実現されるにあたり、ともに頑張りたいと私どもも思っております。特に、市長のリーダーシップ、強い思い、そしてそれぞれのステークホルダーの思いが1番大事でありますが、想像するに医師は敷居が高いと思うところがあります。もしかすると、医師会に行くとちょっと難しいって言われて、それで話が終わる時があるのかもしれないと思うのですね。 今回、安藤会長が日本医師会に働きかけてくださったことは非常に重要です。各地の医師会の先生方からの信頼を得ながら、地域の首長さんたちがリーダーシップを発揮する環境を整えています。また、デジタル田園都市国家構想交付金も活用しつつ、診療カーだけでなく郵便局や公民館などの地域の拠点も有効に活用することができます。私どもといたしましても、地方創生の中で皆様の関心が大変高い医療について、実のある政策をお届けしたいと思っておりますので、皆様が各地域の伝統となっていただくことを切に願っておりますし、私どももそのための努力は惜しまないつもりでおります。是非、何かお困り事がございましたら、地方創生部局まで遠慮なくお尋ねいただければと思います。今日は本当に素晴らしい会を運んでいただきました関係の皆様に心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
  • (司会)ちょうどお時間も参りましたので、以上をもちましてセッションは終了とさせていただきます。会場の皆様、改めまして、ぜひご登壇いただきました3名のパネリストに盛大な拍手をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。